2007-07-04
前回船戸与一にケリをつけたが、文学賞受賞作が一つ残っていた。『夢は荒れ地を』(文芸春秋)の完成度はイマイチだが、次の二つの点で私の注意を喚起した。一つは地雷撤去、もう一つは人生の意味だ。
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2007-07-01
私が読んだ範囲では、船戸はテロリズムを描いていない。テロはアメリカと、アメリカを後ろ盾とするイスラエルに対抗する手段だね。圧倒的に大きな力の前で、他に手段を選べなくなってしまった。良し悪しは別として、これは読者の共通認識だと思う。
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2007-07-01
2月から船戸与一の作品を8冊読んできた。ひとまず切り上げるに当たって小論を試みようかな。
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2007-06-22
『猛き箱舟』のプロローグ、雪山の銃撃戦。映像だとちょっと俯瞰、10分ばかりカメラを固定してフィルムを回すと思ってくれ。船戸はこういう描写がうまいね。人物の動作を微に入り細に入り描くし、何より念入りな情景描写がリアリティーを生む。
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2007-05-27
船戸は『もの食う人びと』の著者辺見庸について、その文庫の解説で「スクープを重ねて中国公安当局に監視され、ついにはジャーナリストの勲章ともいうべき国外退去処分を受けた」と書いています。
このような記者魂は“反中国”とは何の関係もありません。船戸の中国レポートもそのような浅薄な思想とは無縁です。彼は中国に関する私の素朴な疑問にはっきりと答えてくれました。
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2007-05-26
いかめしいタイトルが付いていますが、本書は中南米、中東、中国が抱える問題の現地レポートです。レポートであると同時に、船戸の小説の取材ノートでもあります。
ただし、船戸の小説はあくまでフィクションですから、取材した人物を主人公にはしません。彼の想像力は挫折した者たちのその後を描いて、もう一度挫折させるという苛酷といえば苛酷な小説を生んでいます。
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2007-04-29
さて冒頭の「朝日・読書案内」に戻る。
私は旅行どころか4年間も北海道に住んで、アイヌ人のことは何も知らなかった。ただ武田泰淳『森と湖のまつり』に登場する知識人としてのアイヌ人、白老の観光集落、大昔のNHKドラマ『コタンの口笛』、思い出せるのはそれだけだ。
今でも関心は薄い。日本が単一民族だと主張する政治家がいると、アイヌ人はどうなんだと反論したくなるに過ぎない。
そして、本書で示唆された次のこともアイヌ人の本質とは何ら関係がない。北方領土問題だ。
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2007-04-28
私は船戸がアイヌ人に対して厳しいと感じたのは、アイヌ人の和人に対する反逆度がてぬるいと思ったからだ。しかし、蜂起→全滅というロマンは史実に反する。そこで船戸はアイヌの民族性を守り抜くという徹底した姿勢をもたせなかった。では、なぜ反乱か。
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2007-04-27
4/25から三日間“『蝦夷地別件』からの眺め”と題した記事を連載した。文が気に入らないから消して、4/27に“想像力とリアリティー”を載せた。
何が気に入らなかったかといえば、曖昧なことを書いたからだ。どうも気に掛かると先に進めない。日付を3日遡ってそれらをこの“ノート”に代える。気が済むように書いたまでだ。「気」ばっかりだな。
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2007-02-23
『砂のクロニクル』(1992)を読んで、さて次にと図書館へ行ったら、お目当ての本がなかったので『三都物語』(2003)を借りた。三都のうちの二つが横浜と光州だったからだ。しかし、これは読むに値しなかった。野球小説だが、船戸じゃなくても書ける。駄作もあるのだなあと妙に安心した。
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2007-01-16
『砂のクロニクル』 船戸与一(毎日新聞社)
新宿のAで話が出たとき、船戸はいくつかの賞を取っているからベストセラー作家だと思っていたが、なかなか売れないらしい。それなら読んでみようかということだ。たまたま酔生夢死老人も高村薫とともに推薦していた。
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