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2010-02-19

『「在日」のはざまで』(金時鐘、平凡社ライブラリー)

[The REK Friday Blog]
『いとしのクレメンタイン』、私にとっては『荒野の決闘』の主題歌だ。もちろん『雪山讃歌』としても親しまれているが、朝鮮では次のような歌詞がついた。金時鐘(キムシジョン)の訳で、

2009-11-20

『熊野物語』 

[The REK Friday Blog]
 中上紀の『熊野物語』(平凡社)に収められている最後の話『海神山神』はこんな内容だ。

2009-10-30

冬の兵士 

[The REK Friday Blog]
『冬の兵士~イラク・アフガン帰還米兵が語る戦場の真実』(岩波書店)を読んだ。最初に反戦イラク帰還兵の会(IVAW)事務局長ケリー・ドーアティは次のように語りかける。
「人々にとっては、私たちを英雄と呼び、私たちのことを忘れ、私たちが背負った犠牲と耐えてきた恐怖を忘れることのほうが、いつだってはるかに容易だ」

2009-10-09

過ちは繰り返します秋の暮

[The REK Friday Blog]
 10月5日の朝日朝刊「俳句・短歌」のページに、「うたをよむ 不思議な町」というコラムがあった。仁平勝という俳人が書いたものだ。
 仁平は15年戦争の時代に、戦争を題材にした多くの無季俳句がつくられたが、とりわけ渡辺白泉が秀でた作品を残したという。

2009-06-19

『海辺のカフカ』(村上春樹、新潮文庫)

[The REK Friday Blog]
 今月はじめ、石川県で空からおたまじゃくしが降ってきたというニュースがあった。竜巻の気象条件でもないらしい。地元では首をひねっているというのだが、『海辺のカフカ』でも、東名の富士川サービスエリアに空から大量のヒルが降ってきている。ヒルどころか、中野区ではイワシとアジ2000匹が降り注いだ。
 どうやら村上春樹は超能力者かもしれない。

2009-05-15

『(らふ)たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ』(大江健三郎、新潮社)

[The REK Friday Blog]
 小説のタイトルは難しい。「(らふ)たし」とはBEAUTIFULの意。ポーの詩の日夏耿之介訳をタイトルにした。
 私は『たし~』を読んで、大岡信の詩を思い浮かべた。今から40年ほど前、大岡が30代後半だ。>

2009-03-06

『地を這う虫』(高村薫、文芸春秋)

[The REK Friday Blog]
 女性を描ければ一人前だといわれる。男の作家の話だ。かつて大江健三郎『個人的な体験』の火見子について、日本文学で五指に入る女性像だといった評論家がいた。
女性作家が男を描く場合はどうか。男の読者から見れば、そんな男もいるかもしれないで終わってしまうのだね。これは偏見か。
 高村薫は男を描く数少ない女性作家だ。でも、『マークスの山』の合田について、男の目ではちょっと違うかなと思った箇所が一つあったのを覚えている。

2009-02-20

悪口考 

[The REK Friday Blog]
 韓国・朝鮮日報に興味深いコラムがあった。まずちょっと読んでみてくれ。飽きさせないと思う。

「バカ」が最もひどい悪口である社会
 日本で韓国のヤクザ映画を見ると、「あんな風に翻訳していたら面白みがなくなるではないか」と思う。たった一言でも観客に緊張感を与えられるような、さまざまな罵倒のセリフをすべて「この野郎」や「バカヤロー」と翻訳しているためだ。耳を塞いで日本語の字幕だけ見ると、ソウルの小学校低学年の子どもたちのケンカよりもレベルが低いように思える。

2009-02-06

名刺を交換しないデモ 

[The REK Friday Blog]
『私の祖国は世界です』(玄順惠 岩波書店)は玄順惠版“何でも見てやろう”だが、第2章「日本のうしろ姿」は著者による「小田実論」だ。
 作家でもあり市民運動家でもある小田実を論ずるのは難しいと思う。玄順惠は結婚相手の小田を母親に紹介するのに、“思想家”だといったら母親はすぐに納得してくれたというエピソードを紹介している。
 思想家とは、日本人の受ける感覚では“在野の知識人”とでもいおうか。

2009-01-30

『隠岐島コミューン伝説』 

[The REK Friday Blog]
 友人が松本健一と山中恒の本を何冊か送ってくれた。彼の兄が辺境社という出版社をやっている。かつて井上光晴の雑誌『辺境』を出していたところだ。すべて発行は辺境社だが発売は勁草書房。その中の1冊にこの本があった。
 前書きにこんなことが書いてある。「暗さは孤独な精神としては深く持続されるが、他者や未来に繋がってゆくエネルギーをもたない

2009-01-02

国と人々と国家

[The REK Friday Blog]あけましておめでとうございます

『敗北を抱きしめて』(岩波書店)の著者、ジョン・ダワーは朝日新聞に田母神論文を批判した一文を寄稿して、最後にこう締めくくっている。(全文は末尾にアップしてあります)
「国を愛するということが、人々の犠牲に思いをいたすのではなく、なぜ、いつでも国家の行為を支持する側につくことを求められるのか」

2008-12-19

歴史書と記録小説 

[The REK Friday Blog]

 吉村昭といえば戦記物作者であるとしか知識はない。作風はまるで知らない。図書館で吉村の時代物が目に留まったので読んでみた。畑違いの作家による時代小説にはよく拾い物があるからだ。たとえば、辻邦生の『江戸切絵図貼交屏風』(文芸春秋)はよかった。

2008-10-24

『切羽へ』(井上荒野、新潮社)

[The REK Friday Blog]                    
 井上光晴の娘だから、それに名前からして、表現があるいは心が激しい小説、または社会問題を正面から扱った小説を書くのかと思っていた。しかし、とても穏やかな小説だ。
 ところで、国分さんの娘さんの名前は確か国分草野だった。私はそれを聞いたとき、国分さんはロマンチストだなと思ったものだ。それに引き換え井上荒野とは、井上光晴は自分の娘を私物化しているなという印象をもったよ。

2008-07-25

光州5月抗争・見事に散った銃よ!

[The REK Friday Blog]
私は韓国経験(4)で“5.18を銃なき闘いへ”を書いた。
このたび『光州5月抗争の記録~死を超えて、時代の暗闇を越えて』(1985.4)(全南社会運動協議会編、黄暎記録、日本カトリック正義と平和協議会発行、光州義挙追慕会翻訳)を読んで、銃撃戦は抵抗の美学だ、銃を持たずに虐殺された市民に対する鎮魂の意味しか持たないということを確認した。

2008-02-29

長嶋有の近道

[The REK Friday Blog]

『夕子ちゃんの近道』(長嶋有、新潮社)を読んだ。
 東海林さだおの漫画をみていると、作者はまじめに主人公の日常を描いているのに、どこかがずれている感じがしておかしい。長嶋有の小説もそのような印象を受ける。私が今まで読んだうちで最も速く読み進んでしまう小説だった。一行飛ばしてもどうということはない。ということは、まるで野菜や昆虫の細密画のように、描写が細かいのだね。だから、前の数行で小説の風景が頭に入っている。日常を描いてストーリーはなし。小説の世界に入っているだけでいい。

2008-01-11

『長雨』尹興吉(ユン・フンキル)(東京新聞出版局 1973) 

[The REK Friday Blog]

 次のような状況設定は対立の典型的パターンだね。系図をみてもまるで左右対称だ。だからといって、この短編小説を敬遠しないでほしい。私は韓国第1級の小説だと評価するんだよ。
 時は朝鮮戦争下。場所はソウルから疎開できる距離にある山間の村。語り手である僕の父の弟は人民軍のパルチザン、母の弟は国軍兵士。
 韓国では母方の親族を“外祖母”“外叔母”のように“外”の字を被せて呼ぶようだ。僕の家族は次の通り。
系図スキャン

2007-11-23

李良枝の叶わぬ夢 

[The REK Friday Blog]
 在日韓国人女性作家李良枝(イ・ヤンジ)は89年、33才の時に書いた『由熙(ユヒ)』で芥川賞を受賞したが、2年後に病気で急逝した。彼女は27才の処女作『ナビ・タリョン』が芥川賞候補作となり、次の2作も連続して候補作になるという才能を示していた。
 私が『由熙』を読んだとき、韓国に対しては独裁政権と民主化という政治状況だけが関心事であり、在日についても就職差別という社会事象に注目していたにすぎない。
 このたび一巻本の分厚い個人全集(93年、講談社)を図書館で手にして、見開きに載っている数葉の写真を眺めているうちに、もし彼女が生きていたら小説家で大成したというよりも、文化事業で日韓の大きな架け橋になったのではないかと、感慨を抱いたのだった。

2007-10-05

チェチェン報道家の歯噛み 

[The REK Friday Blog]

『プーチン政権の闇』を出版した林克明は最後にこんなことを書いている。「日本からはるか彼方のロシアやチェチェンの実態を取材し発表しても、日本の権力機構にとって痛くもかゆくもない。だから、足元の日本の現状を見据えて改革しなければならない」
 95年から10年にわたり16回もチェチェン入りした著者にしてこの言葉だ。ロシアと日本の政治風土がまったく同じように見えるという。

2007-09-28

朗読する男の物語 

[The REK Friday Blog]
ベルンハルト・シュリンクの『朗読者』(新潮文庫)を読んだ。3部構成の第1部では全体の3分の1以上は優にある100頁を費やして、15歳の少年と36歳の女性との1年にわたる日ごとの性的関係が綴られる。第2部は少年と別れた彼女が戦争中に強制収容所の看守をしていたという罪で裁かれる場面、第3部は成人した少年が彼女の出所に備えるエンディングだ。
 果たして“ぼく”と元女看守との関係は作者の経験だろうか。このような詮索は作者に対する読者の唯一の権利だ。
 よく小説家は「これはあなたの経験ですかと聞かれて辟易する」という。しかし、その反対の場合もある。

2007-08-31

1コマ漫画の奇才

[The REK Friday Blog]

『コバウおじさんを知っていますか』(鄭仁敬<チョンインキョン>・草の根出版会)に素晴らしい一コマ漫画が紹介されています。
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 さて、この絵には鳥居がいくつ描かれているでしょう。まずガウンの胸マーク、パジャマの模様、スリッパのマーク、犬の寝床のカバー、餌の骨、あとは家具でテーブルの脚、椅子の脚と背もたれ、サイドボードの枠、写真ケース、壁の額縁、電話台の脚、犬寝床の入り口、そんなところでしょうか。次の絵も是非見てください。

2007-08-24

臨終の描写断片

[The REK Friday Blog]
 大分昔の作品ですが、倉橋由美子の『ヴァージニア』(1968)を読みました。若い作家の小説は読む気もしないので、フリーマーケットを流していたらこの新潮文庫が目に入ったのです。1冊100円でした。『長い夢路』(1968)と『霊魂』(1970)が併録されています。
『長い夢路』は父親の死を描いています。主人公は兄弟姉妹のうちでも父親に溺愛されていました。ですから、母親を批判的に見つめながら父親を描写するという“母娘”関係の心理小説でもあります。
 ただし、私はそのようなテーマに興味をもったのではありません。死んでゆく人が臨終をどのように迎えるのか、つまり死人の立場から死を捉えているので紹介かたがた私の昔の記憶も呼び起こしてみようと思ったのでした。

2007-07-07

村上春樹って?(下)

 私は村上春樹を『羊をめぐる冒険』までの数冊しか読んでいない。村上の小説は読み手を居心地よくさせてくれる。世の中にはいいことも悪いこともある。それはそれとして世の中とはそういうものだ。
 私はこのようなノンポリ性に浸っていられないと思って読むのを止めた。
 

2007-07-07

村上春樹って?(上)

 知人の書棚に村上春樹訳『バースデイ・ストーリーズ』(中央公論新社)を見つけて、いつか読んでみようかと思って、やっと手にしてみた。
 目次をめくって、エピグラフを読んでびっくりした。まあ、読んでみてくれ。(かすれていたら125%に拡大して)

 

2007-06-15

『鉄条網に咲いたツルバラ』を読む(下)

 本書を読みながら、私には彼女たちの困難な闘いよりも彼女たちを取り巻く労働環境の後進性が印象に残った。これは日本の植民時代の話だろうかと。
 しかし、考えてみれば韓国で独裁政権が倒れたのは80年代末のことだ。闘いの労働現場が強権的であったことは当然だろう。

2007-06-15

『鉄条網に咲いたツルバラ』を読む(上)

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 私はイ・チョルスン(李順)の名前を決して忘れない。
 彼女がどんな人かは次の三つの言葉を紹介するだけで十分だろう。

2007-06-07

『贋世捨人』考-車谷長吉の”私という作家のつくり方”-

『赤目四十八瀧心中未遂』は知っているね。寺島しのぶで映画にもなった。車谷長吉(くるまたにちょうきち)はこの作品で直木賞を受賞している。
 私は映画は見ていないし、車谷の小説は『赤目』しか読んでいない。好き嫌いの問題だからこの先読もうとも思っていない。ところが、たまたま『贋世捨人』を手にとって読んでみた。いろいろ考えさせられた。通勤の道々、5メートル先の道路をひたすら見つめながら歩いたほどだ。

2007-05-31

DAYS JAPAN 6月号のDEEP IMPACT

20070531174728.jpg100人の顔写真はさすがにすごい力で迫ってくる。
本号は売れ行き好調らしい。
http://www.daysjapan.net/

2007-05-10

「チェチェン報道」家ー『チェチェンで何が起こっているのか』

 5/8付記事「名家の子息」にコメントをもらっている。推測で補足すればこうだ。
 コメント氏はパッカーとして世界を回った経験がある。旅先でカメラを携えて危険地帯に入ったパッカーと巡り会い、その報告が載っているブログを見せてもらった。
「私には伝えることしかできない」とパッカーはいう。このようなパッカーにたびたび出会うと、コメント氏は「ああそうですかとしか返答のしようがなくなる。せっかくの体験を有効に生かす道を選んでほしい」と思った。

2007-05-02

梯子を外された人々(番外編)ー越境の時

20070502192503.jpg20070502191400.jpg20070502192340.jpgまもなく80に手が届く鈴木道彦は「私はたとえ自分一人取り残されようとも、この国の醜さを意識する者として踏みとどまるだろうし、その意識だけは譲らずに一生を終えるだろう」と書く。

私はこのような人が好きだ。

2007-03-14

我慢比べのノーベル賞ーわたしの名は紅

 10月に購読予約した本が準備されたと図書館から連絡が入った。ノーベル賞を受賞したトルコ人作家オルハン・パムクの『わたしの名は紅』(藤原書店)。船戸与一シリーズを一時中断した。
 パムクはトルコ国内のみならず海外でも高い評価を受けて数々の文学賞を与えられているらしいが、本書が初邦訳だ。