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2007-10-05

チェチェン報道家の歯噛み 

[The REK Friday Blog]

『プーチン政権の闇』を出版した林克明は最後にこんなことを書いている。「日本からはるか彼方のロシアやチェチェンの実態を取材し発表しても、日本の権力機構にとって痛くもかゆくもない。だから、足元の日本の現状を見据えて改革しなければならない」
 95年から10年にわたり16回もチェチェン入りした著者にしてこの言葉だ。ロシアと日本の政治風土がまったく同じように見えるという。

 私は赤レンガ倉庫の裏手にあるスタッフ用喫煙所のベンチに腰掛けて煙草を吸っていた。林克明の講演と『踊れ!グローズヌイ』の上映が終わったのだった。そこへ林が煙草を吸いに来た。昼前、会場の設営準備中に早くも姿を現した林は私に煙草はどこで吸えるかと聞いてきた。ここを教えてあるというわけだ。
 たまたま居合わせたyuとtaの若い夫婦が、会場で購入した『チェチェンで何が起こっているか』をかざして「後で読ませてもらいます」というと、林はうれしそうに笑った。
 
 私はその本の読後の印象を5月に「チェチェン報道家」で記している。それを思い起こして林に訊ねてみた。チェチェンに入るためにモスクワで2年間ロシア語を勉強したそうですね。いやいや、半年で行くことになりましたとはにかんだように林はいった。
 今読み返してみると、長い新婚旅行のつもりで半年は勉強し残りの半年は南ロシアを旅行する予定だったと書いてある。しかし、奥付には「1年10ヶ月モスクワに住み、チェチェン戦争を取材」とあるので、てっきり最初の印象を持ってしまったのだ。

 林は煙草を吸いながらあたりを見回して「木が何もないところですね」といった。私は昔の倉庫街をそのまま生かしたかったのでしょうと答えたが、「夏は日差しをよけるものが何もない」と気に入らない様子だった。林は長野県の生まれだ。信州の山々を故郷にしている身にはハマの開国趣味など浅はかなものだと感じているのかもしれない。長野高校の同窓会で猪瀬直樹と撮った写真が同校のHPに載っていた。もちろんツーショットではない。大先輩とはいえ猪瀬を苦々しく思っていることだろう。

 ロシアでは3大テレビネットワーク(RTR=ロシア国営テレビ、ORT=ロシア公共テレビ・第1チャンネル、NTV=独立テレビ)に加えて、かつては良心的な番組も放送していたREN-TVも、事実上政府系になったという。ロシア初の民間テレビ局「ロシア独立テレビ」の場合、筆頭株主を脱税容疑で摘発して屈服させた。新聞は言わずもがな、独立メディアは激減し、最後の砦であるインターネットも副検事総長が検閲の必要性を語っているというのだから危ういらしい。
 日本では政府の圧力がロシアほど目に見えるものではないが、自主規制という蓑をかぶった番組ばかりがまかり通っていることは誰でも感じているに違いない。林がロシアと日本の政治風土が似てきたというのはこれを指している。

 林によると、ロシアの「チェチェン報道」は日本の「北朝鮮報道」と同じ効果をあげているという。政治家として実績のなかったプーチンは第2次チェチェン戦争を開始してチェチェン=悪というイメージづくりに成功、ロシア人の心を掴んだ。一方、拉致・ミサイル・核という反北朝鮮キャンペーンは小泉のもとで安倍をスターにしたというわけだ。ただし安倍は首相としての資質を欠いていたことは誰の目にも明らかだと、林は参院選の前に書いている。

「日本の現状を見据えて」と林はいう。では「改革しなければならない」へ向かう行動とは何か。林は「平成暗黒日記ー自由民権を目指すブログ」をもっている。フリージャーナリストとして第1に共謀罪制定の策動及び自衛隊による国民監視活動を弾劾するが、そこでは状況を批判する記事と集会の紹介の域を出ていないのが残念だ。
 
 安倍の腰砕けでこのところ改憲勢力はなりを潜めている。私は護憲を叫んでいればすむ時は既に遠のいて、憲法を具体化する「それぞれの、ある一つの運動」が不可欠だと思う。それは護憲とセットになって初めて力を発揮するはずだ。
 私の行動計画については後日書く。

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