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2010-01-15

シリーズ第2弾 君はジョージ・ワシントンのメンテナンスを知っているか

[The REK Friday Blog]
 Kくん、原子力空母ジョージ・ワシントンが2年に1回6ヶ月の定期修理を受けるために、アメリカ本国に戻ることを繰り返していたらどうなる。横須賀母港配備という“前方展開”の意味はなくなるのじゃないか。そこに一筋の道が開けるかもしれない。これが今回の主題だ。
 原子力空母の耐用年数は約50年。海軍のマニュアルによれば、その中間に1回原子炉の燃料交換を行う。ジョージ・ワシントンはいま20才だから、5,6年後にはアメリカへ戻って本格的な原子炉修理を行うことになっている。また、2年に1回の6ヶ月にわたる定期修理を行うことが定められているのだよ。

 米海軍も原子力空母の海外母港配備は初めてだから試行錯誤状態のようだ。前方展開している原子力空母(ジョージ・ワシントンだけだ)については、1年に1回4ヶ月の定期修理を行うとの米シンクタンクの報告もある。
 そこでジョージ・ワシントンは去年の1月から5ヶ月間にわたるメンテナンス工事が行われ、今年もまた間もなくその工事が始まろうとしているのだね。

 米海軍横須賀基地には艦船修理部(SRF)という部署がある。日本人従業員1800名が働いているんだが、この部署は旧日本海軍の技術力を引き継いでおり優秀だという評価を海軍から受けている。
 海軍のメンテナンスマニュアルによれば、ここは通常動力艦の修理を行うと定められている。つまり原子力艦船以外の軍艦なら何でも修理できるというのだ。

 軍艦の修理は通常動力艦だけで、原子力艦船の原子炉関連部分の修理を行う権限がない。これをしっかり抑えておこう。だからアメリカの造船所から650人もの修理資格をもった技術者が派遣されてきたというわけだ。彼らは横須賀から横浜にかけてのホテルに寝泊りした。
 この事実もまた横須賀では原子力空母の動力装置の修理を行わないというエード・メモワールに違反している証拠のうちの一つだと思わないか。

 それではKくん、放射性廃棄物1トンをも出したジョージ・ワシントンの原子炉関連部分の修理はどこで行われたのだろう。
 朝日新聞の質問に答えて米軍は次のように答えている。「原子炉に関連する部分の修理はすべて艦内で行った」
 本当にジョージ・ワシントンの艦内だけで修理ができるのだろうか。これからはリムピース(追跡!在日米軍)の報告を参考にして書く。

 フロリダ州にメイポートという海軍基地がある。ここは通常動力艦ケネディが母港としていたのだが、ケネディが退役するというので、バージニア州のノーフォークという基地を母港としている原子力空母5隻のうちの1隻が、2014年にメイポートを母港とすることになった。

 その母港化報告書によれば、原子力空母の母港にはCIF(放射能管理下の作業施設)を陸上に建設することが必須となっている。
 CIFでは原子力空母の放射線に係わるすべての維持・修理を行い、放射線廃棄物の取り扱い、回収、梱包も行うとされているんだね。

 Kくん、横須賀にCIF(放射能管理下の作業施設)が建設されたと思うかい。ジョージ・ワシントンが停泊している岸壁近くにバージ(はしけ)が設置されていて、そこがCIFの代替をしたのだという見方もあった。何しろ米軍は情報を公開しないからね。でも、のちにそうではないことが明らかになった。というのもCIFという施設に設置されるべき放射能隔離壁の重さに、はしけでは耐えられないだろうという理由だった。

 メイポート基地の場合だがね、原子力空母受け入れのためには、港の浚渫から各種作業施設の建設まで3年半の時間をかけている。それが母港化のまともな準備なんだね。ところが横須賀では「まず母港配備ありき」で、作業施設の建設計画は明らかになっていない。
 ちなみに、前回書いた発電所の建設にしても、もしアメリカ本国なら地盤調査をして強固な岩盤の上に設置したのではないだろうか。埋立地の上というのでは、君だって母港化報告が許さないと思うだろ。

 さて、放射性廃棄物1トンをも積み出した修理は、横須賀にCIF(放射能管理下の作業施設)がない以上、やはりジョージ・ワシントンの艦内で行われたようだ。
 それではKくん、ジョージ・ワシントンのメンテナンスは毎回毎回その艦内で行われるのだろうか。その保証はない。

 なにしろ母港にCIF(放射能管理下の作業施設)がなくても放射線管理が必要な修理を行えるのなら、アメリカ本国でも可能なはずだ。とすれば母港施設予算が大幅に削減される。議会は飛びつくにちがいない。そうできないところに今回のジョージ・ワシントンメンテナンスのからくりがあるとリムピースは結んでいるのだが。

 もう一押しして、海軍司令官の次の言葉を聞いてくれ。
「作業施設は母港から十分近いところに作られるべきだ。兵士が家族から離れている期間を最短にし、兵士の生活の質を許容できるレベルに保つためだ」

 司令官は兵士の士気にも影響するといっている。陸軍や海兵隊に比べて海軍は優遇されているなあという気もするけど、原子力空母の母港とは単に空母が遠征から戻って停泊する港ということではないんだね。修理施設を伴わないと母港の役割は果たせない。これも大事なことだから抑えておこう。

 Kくん、以上のように米海軍にとって横須賀基地は適切な母港ではないのだね。将来にもわたって適切な母港ではないようにするには、もう分かるね。修理施設を作らせないことだ。

 日本政府は原子力空母母港化のために、港の浚渫費用として138億円を思いやり予算で負担した。この浚渫工事は日本の負担が含まれていたから裁判も起こせた。
 しかし、米軍予算で工事を行うと、日本側では何も手を出せないんだ。去年ジョージ・ワシントンが停泊する埠頭(バース)の隣に大型の原潜を入れるための浚渫工事があったが、これは米軍の予算で行ったから、何が起こっているのか推測するしかなかった。

 海軍の予算だろうが、日本の思いやり予算だろうが、横須賀基地にCIF(放射能管理下の作業施設)を作らせない。エード・メモワールが建設を禁じているじゃないか。私には原子力空母母港撤回の一筋の道が開けたように思えたのだよ。

メンテパンフリムピース紹介


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