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2007-03-02

パンガpタ

 15,6年前、前回表紙絵で紹介したテキストを開きながら、初めてハングルラジオ講座を聴いた。最初は挨拶だ。“パンガpスmニダ”。「お会いできてうれしいです」
 語句の欄に パンガpタ:(会えて)うれしい
 私は「会えてうれしい」という言葉をもつ朝鮮民族はやさしいのだなと思った。大陸から突き出た最果ての半島で暖かく人を迎える。

「うれしい」という形容詞はほかにも“キップダ”がある。辞書を当たると、どちらも「よろこばしい」という意味の似たような例文が並ぶ。ただ、“パンガpタ”にあって“キップダ”にない意味は「懐かしい」だ。
 
“教えて!goo”にこんなやりとりがあった。
-『冬ソナ』第1話開始9分30秒で、高校生が転校生にパンガッタと挨拶しているようです。よく聞き取れないのですが、どんな意味ですか。
- 転校生の方はお会いできてという言葉を添えて、マンナソ・パンガップスムニダといっています。よろしくと訳されていますね。
- 初対面で会えてうれしいときに使います。それに久しぶりに会ったときにも使います。
- お二人の答えで分かりました。ありがとう。

 日本でも二昔前には年配の女性が「お懐かしゅうございます」と挨拶していた。パンガpスmニダはそれに相当するだろう。日本ではこの言葉は廃れてしまったが、朝鮮半島では日常の挨拶として残っているというわけだ。
 
 06.10.05と11.10で紹介した黄皙暎の小説『懐かしの庭』(岩波書店)の原題は「オレデダ:(時間的に長く過ぎている)古い、久しい」を使っている。女性主人公が再訪しても、「決してうれしい感情が沸いてこない。楽しいが辛い日々を過ごした」ということがネイティヴには分かる(と思う)。
 仁荷大学の訳者・青柳優子さんは頭を悩ましたに違いない。日本語の「懐かしい」は単なる遠い過去の感情を呼び起こすだけで、うれしいニュアンスだけではないだろう。原題から離れれば別だが、こだわれば他にいいタイトルもない。最近韓国文学翻訳大賞受賞の報が届いた。
 ちなみに映画は『古い庭園』のサブタイトルがあった。日本公開がなされていないから、暫定的なものだが。

 このページは来年予定している韓国旅ブログの巻頭を飾る第1番目の候補だ。

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