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2007-04-20

国籍無き狂気ー銃撃事件

 一昨日銃撃事件の犯人が留学生じゃなくてよかったと書いた。そうだとすれば、韓国人留学生ばかりではなく、アジア系留学生、ひいては世界からの留学生全般に監視の目が及び、留学制度にまで影響が出るのではないかと心配したからだ。内向する米国、異物排除を主張する米国、それに根拠を与えることになると。
 犯人は8歳の時に米国に渡った韓国人だった。韓国では米国に移住する人が多いから、このような人々を1.5世代と呼ぶ。日本人の語感では1世と2世の中間という意味だ。

 事件は15年間彼が育った米国社会の環境のなせることで、国籍に何ら関係をもたない。
 ボストン在住の、韓国で1,2を争う大作家李文烈もインタビューにこう答えている。
 --韓国出身という点が心配になるが。
「彼は英語で作品を書いて英語で思考する。日常語も英語だった。彼はもう米国的思考をもった米国人だ」

 事件に対する私の心象の軌跡はこうだ。

 アジア系学生と報道されたとき、私には日本人ではという気懸かりが1割がたあった。“上海出身”と誤報されたとき中国人はどれほど衝撃を受けたか。そして、“韓国人学生”だ。韓国の動揺は想像に余りある。

 なぜ私は一割がた心配したのか。例えば、オサマ・ビンラディンがサウジアラビア人だからといって、私はサウジ人一般に対する何らかの感情を呼び起こすだろうか。ただサウジの国情を詳しく知りたいと思うだけだ。
 私は国家とか国民の立場から世界を見るという一割がたの弱点があったということだ。

 彼の狂気は貧困から生まれた。韓国社会の貧困が特殊なのではない。米国・欧州の貧困も狂気を生みうる。中東や中南米の貧困は政治へ向かうが、先進諸国の貧困は自己に完結するということだろうか。

 ところが、犯人の心理・行動、事件の背景が明らかになるにつれて、このような私の“感傷的な”心象は全く無意味だ。

 事件は8年前のコロンバイン事件との類似性が指摘された。当事件とは何だったか。記者の報告文を載せる。
コロンバイン事件が米国社会に投げかけた衝撃は並大抵ではない。事件も衝撃的だったが、この事件は▽銃規制▽インターネット利用▽暴力的なゲーム、映像物▽学校内暴力・孤独、はなはだしくは犯人たちが好きだったと知られるロックグループのマリリン・マンソンに関する悪魔崇拝思想に至るまで幾多のイッシューを生産した。チョ・スンヒがコロンバインの犯人であるエリックとディランを殉教者としながら自分も殉教すると言及したことは、模倣犯罪の典型という。同時に今後はさらに無惨なバージニア工科大事件がコロンバイン事件の象徴性を塗り替えると見られている。        イ・スンニョン記者 2007.04.20 12:45:48
 
 コロンバイン事件を扱った映画『Bowling for Columbine』の私の鑑賞感想文から抜書きする。

マイケル・ムーア(NRA全米ライフル協会終身会員)
「何故アメリカは銃による死者が多いのか?年間約1万1千人。ヨーロッパ諸国3桁、日本2桁だが」
チャールトン・ヘストン(NRA会長)
「アメリカの血塗られた歴史のせいだ」
ムーア
「他国も血塗られている。ドイツ、ヒットラーのホロコースト。イギリス、世界の植民地化。フランス、アルジェリア解放闘争弾圧。日本、南京大虐殺」
ヘストン
「君が聞くから答えただけだ。分からない」

 なぜ血塗られた歴史か。ムーアは「アメリカのミニ歴史」というアニメを映像の受け手に見せる。「清教徒という人たちはイギリスで迫害されていました。それで新天地に移住しましたが、そこにはインディアンが先住していて安心できませんでした。そこで彼らを殺し---アメリカ人は9.11以後も安心を得るために人を殺してきました」。

 事件の重大性は死者の数で判断される。銃規制が行われている国で起こるこの種の事件の死者総数は大きい。

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